ここからのPart1では、Windows 8について今知っておきたい12の情報をお届けする。Windows 8 Consumer Previewを今すぐ使う人はマニュアル代わりに役立ててほしい。Windows 8の利用を検討している人は、まずはこれらの違いを把握しておこう。
Windows 8をインストールして使い始める際にまず驚かされるのは、図4の「PCへのサインイン」 *1画面でメールアドレスの入力を求められることだ。これは、Microsoftが個人認証に使っているWindows LiveのIDとして登録しているメールアドレスを入力し、Windows 8のユーザー名としてそれを使えという意味だ。まだWindowsLive IDを持っていない人は、この画面の下の方に「メールアドレスを新規登録」というリンクがあるので、それをクリックして、自分のメールアドレス(一般的には、インターネットサービスプロバイダが発行するメールアドレス)をWindows Live IDにできる。
Windows 8は、Microsoftのサービスとの連携を強化している。Windows 8のユーザー名としてWindows LiveIDを使うことで、容易により良いサービスが受けられるというのがMicrosoftの言い分だ。ただ、従来通りに自分の好きなユーザー名を使いたいという人もいるだろう。その場合は、図4の下方にある「Microsoftアカウントでサインインしない」リンクをクリックすることで、従来と同様にユーザー名を自分で自由に決められる。ただ、Windows Storeなどのサービスを使う場合は、Windows Live IDの入力を別途求められる。
パソコンを使う上で最初に覚えなければいけない操作は、正しい電源の切り方(シャットダウンの仕方)だろう。Windows 7では「スタート」ボタンを押して「シャットダウン」を押せばよかった。Windows 8ではやり方が変わっている。
その一つを紹介しよう。マウスを使っている場合は、マウスのポインタを画面の右下隅に置く*1。すると図5のように白いアイコンが浮き上がってくる。そこにポインタを移動させると、図6のように「システムコマンド(system commands)」が現れる。
「設定」をクリックすると「スタート」という画面になり、「シャットダウン」というアイコンをクリックすると図7のようにメニューがポップアップする。ここで「シャットダウン」を選べば電源を落とすことができる*2。タッチ操作が可能なパソコンの場合は、画面の右端から左方向へ指を「スワイプ(swipe)」する*3ことで図6の画面に持っていける。
Windows 8に付属してくるMetroアプリケーションを使ってみよう。図2(e)のスタート画面にはタイルがたくさん並んでいる。その左上隅にある「Store」をクリックすると、図8のスプラッシュスクリーン(起動画面)が現れ、しばらく待つと図9の画面になる。これがMetroアプリケーションの販売店と言える、「Windows Store」だ。左端に「スポットライト」というブロックがあり、その右側に「ゲーム」が続く。さらに右側に続いていて、マウスなら、横方向のスクロールバーか、ホイールを使って左右へ移動できる。Ctrlキーを押しながらホイールを回すことでズームができる。
タッチ操作が可能なら、スライド(ドラッグ)で移動できる。左右へのスワイプをすれば流れるように動く。ズーム操作をしたい場合は、ピンチ(2本の指を置いて間隔を狭くする)で縮小、ストレッチ(2本の指を置いて間隔を広げる)で拡大となる。
スタート画面に戻るには、マウス操作なら二つの方法がある。一つは、先ほど図5と図6で見たシステムコマンドの「スタート」をクリックすること。もう一つは、マウスポインタを画面の左下隅に置いて、図10のようにスタート画面のサムネール(縮小画面)が出るのを待ち、クリックすることだ。
タッチ操作の場合は、画面右端から左方向にスワイプして図6のシステムコマンドを出し、「スタート」をタップするのが早い。
元来、Windowsのデスクトップアプリケーションの配布の主要媒体は、フロッピ・ディスクと光ディスク(DVD-ROMなど)であった。パソコン通信やインターネットでアプリケーションを配布する場合は、ディスクに入っていたのと同じファイルを、開発者から利用者に直接送る形が多かった。
Metroアプリケーションの配布は、図11のように、Microsoftが運営する「Windows Store」を経由する形となる。開発者は自分が作ったアプリケーションをWindowsStoreに登録し、利用者は図9の「Windows Store」画面からアプリケーションをインストールする。中央集権型の配布モデルと呼んでよいだろう。
中央集権型のアプリケーション配布は、米AppleのiPhoneとiPad、MicrosoftのWindows Phoneなどで採用されている。任天堂やソニーのゲーム機でも同様である。この方法を採用すると、登録時に審査をして問題のあるアプリケーションの配布を防げる。また、問題が発覚した時に配布を中止させることが可能だ。問題のあるアプリケーションが存在しなければ、セキュリティ上の防御が不要になる。
ただ、中央集権型のアプリケーション配布を、自社で社内アプリケーションを開発する企業ユーザーは歓迎しないかもしれない。自社のアプリケーションの情報を公開することで、ライバルに手の内を明かすことになるからだ。Windows8 Consumer PreviewのProduct guide(前述)を見ると、「Businesses can directly sideload their Windows8 apps onto their Windows 8 Consumer Previewdomain-joined PCs, bypassing the Windows Store.」(ビジネスユーザーはドメインに参加したWindows 8Consumer Preview機に、Windows 8アプリを直接サイドロードでき、Windows Storeをバイパスできる)と書かれている。企業ユーザー向けの配慮だろう。
従来のWindowsデスクトップアプリケーションでは、ウィンドウを閉じることがアプリケーションの終了を意味した。メニューに「終了」という項目があることも多かった。しかし、Metroアプリケーションには原則として「終了」操作が存在しない。
先ほどの、「Store」を起動し、その後スタート画面に戻った状態から、今度はInternet Explorerを起動してみよう(図12)*1。この状態でマウスポインタを画面左上に持っていくと図13の状態になり、Storeのサムネール(縮小表示)が現れる。ここでクリックするとStoreに戻れる。そこからスタート画面に戻るとどうだろうか。マウスポインタを画面左上に置くと一つ前の画面が現れ、そこからマウスポインタを下に動かすと、図14のようにInternet ExplorerとStoreのサムネールが現れる。このように、Windows 8では、必要なアプリケーションを次々と呼び出し、その際に以前のアプリケーションを終了しないのが基本的な使い方である。
タッチ操作の場合は、画面左端から右方向へスワイプすることで、その前の画面に戻れるようになっている。図14のように複数の前画面を表示して選択する操作は、筆者が現在知る限りでは、タッチ操作ではできないようだ。
Metroアプリケーションには終了の機能がないが、どうしても終わらせたい(強制終了させたい)場合には、タスク マネージャーを使えば可能である。デスクトップを開き、タスクバーを右クリックして「タスク マネージャー」を選ぶと図15のタスク マネージャーが現れる*1。「Store」「InternetExplorer」といったMetroアプリケーションが出てくるので、それを右クリックしてポップアップメニューを出し、「タスクの終了」を選ぶことでMetroアプリケーションの強制終了ができる。
デスクトップ画面をタッチ操作で使っている場合は、ある地点を長押し(press and hold)すると、四角い枠が表示される。その時点で離すと、右クリック相当の操作になる。
スタート画面のタイルがない部分でマウスの右クリックをすると、図16のように、下側に用意された操作が表示される。これを「アップコマンド(app commands)」と呼ぶ。スタート画面で言えば、「すべてのアプリ」というコマンドがあり、これをクリックすると図17に変わる。右にスクロールすると図18のようになっており、ペイント、メモ帳、コマンド プロンプト、コントロール パネルといった慣れ親しんだプログラムを発見できる。
タッチ操作の場合は、画面の上端から下へ、または画面の下端から上へスワイプすることでアップコマンドを呼び出せる。ちなみに、図12のInternet Explorerの画面の下端にある黒い部分はアップコマンドの下部分である*1。InternetExplorerのアップコマンドには上部分もある。Windows 8を用意したら試してみていただきたい。
図6は画面右端にシステムコマンドを呼び出した様子だが、5個ある項目の一番上にある「検索」を選ぶと図19の画面になる。「アプリ」の検索をする状態になるが、ここで左側の何もない部分をクリックすることで、図17と同様の、すべてのアプリケーションを表示する画面になる。筆者は最初はスタート画面でアップコマンドを利用できることを知らなかったので、こちらの方法を使っていた。
図19右上のテキストボックスに検索語句を入力すると、その下の「アプリ」「設定」「ファイル」の3項目で検索し、ヒット結果がいくつあったかを表示する。例えば、「ロック」という語句で検索すると、「アプリ」と「ファイル」はゼロ、「設定」は8と表示された。「設定」をクリックすると左側に結果が出る。その下のInternet Explorerなどのアプリのアイコンは、アプリをクリックして、そのアプリの検索機能を使うためのものだ。
スタート画面のタイルは、マウスでドラッグして移動できる。また、右クリックすると図20のようなアップコマンドが現れ、ピン留めを外したり、アンインストールしたりといった操作ができる。
左上の「Store」のタイルに「8」という数字が出ているが、これは、8個の更新プログラムをインストール可能であることを示している。このように、タイルにはMetroアプリケーションが情報を表示できる。これを「Liveタイル」と呼ぶ。Storeの場合、タイルを右クリックしてアップコマンドを呼び出し、「Liveタイルをオフ」することが可能だ。
さて、タッチ操作の場合、このような操作はできるだろうか。筆者が今回試した限りでは、やり方がわからなかった。ドキュメントが整備されれば、どこかに書かれるかもしれない。
Windowsパソコンを使い始める際には、何らかの設定をしなければいけないことがほとんどだろう。Windowsの設定の起点となるのは「コントロール パネル」で、それは図18のアプリケーション一覧で「コントロール パネル」をクリック(タップ)することで呼び出せる。呼び出すと自動的にデスクトップが開き、そこに図21のようにコントロール パネルが現れる。
デスクトップ中心で利用する場合は、デスクトップにコントロール パネルのアイコンを表示しておくとコントロール パネルを呼び出しやすい。デスクトップで右クリックして「個人設定」を選び、「デスクトップ アイコンの変更」を選ぶと図22の画面になる。「コントロール パネル」のチェックボックスを入れて「適用」ボタンを押せばよい。この画面では、「コンピューター」「ごみ箱」「ユーザーのファイル」「ネットワーク」の表示/非表示も設定できる。
Windows 8では、コントロール パネルの他に、Metroスタイルの設定画面が用意されている。それが図23の「PC設定」だ。例えば、ロック画面の画像は、こちらで設定する必要がある。PC設定画面を呼び出すには、図7の右下にあるリンク「PCの詳細設定」をクリックする。
PC設定の画面には、これまでなかった機能がいろいろと盛り込まれているようだ。例えば、「全般」にある「PCをリフレッシュする」「PCを初期状態に戻す」「PCの起動をカスタマイズする」などがそうだ。将来は、多くのユーザーにとって必要な設定機能をPC設定画面に集め、コントロール パネルを互換性維持のために使うのかもしれない。
Windows 8に合わせて、サーバー用Windowsの次期バージョン「Windows Server 8」も投入される。Windows8の最大の変化は「スタート」ボタンと「スタート」メニューがなくなって、「スタート」画面になったことだが、WindowsServer 8でも同様の変化が起きている。
図24はWindows Server 8のベータ版で、ログイン後に表示される画面だ。タスクバーに「スタート」ボタンはなく、三つのアプリケーションがピン留めされている。左端から、「サーバー マネージャー」「Windows PowerShell」「エクスプローラー」だ。マウスポインタを画面右上端、または右下端に置く操作で、図25のシステムコマンドを呼び出せる。ただ、システムコマンドの項目は3個で、Windows 8よりは少ないものになっている。
Windows Server 8の詳細については、データシートとホワイト ペーパーが参考になる。仮想化機能「Hyper-V」の強化、複数サーバーの管理を容易にする機能、スケーラビリティ強化、仮想デスクトップ機能の強化などが目玉だ。ただ、ファイルシステムが壊れた時のダウンタイムを短くできる、ネットワークアダプターのチーミング(複数を束ねて高速転送する)といった細かな機能強化も見逃せない。